道明寺は、もち米を原料とした和菓子用の加工米です。もち米を一度蒸し、乾燥させたうえで粗く砕くことで、粒状の原料として仕上げられます。粉ではなく粒を残すという点が最大の特徴で、蒸し戻すことで粒感と粘りを併せ持った独特の食感が生まれます。和菓子原料の中でも、見た目と食感がはっきりと設計された素材といえます。
生のもち米をそのまま加工するのではなく、一度蒸してから乾燥させる工程を挟むことで、米のでんぷん構造は変化します。この工程を経た道明寺は、水分を再び吸収しやすく、蒸し戻した際に芯が残りにくい性質を持ちます。粒ごとの戻りが比較的揃いやすく、製造時のばらつきを抑えやすい点は、業務用原料として重要な要素です。

桜餅に使われ続けてきた理由
道明寺が桜餅に使われ続けてきた理由は、伝統や慣習だけではありません。桜餅は餡を包む菓子でありながら、外側の生地にも食感と存在感が求められます。道明寺は、粒が感じられながらも全体としてまとまりがあり、餡と合わせた際に重たくなりすぎません。噛んだ瞬間に粒がほどけ、時間差で餡と混ざり合う食感は、桜餅という菓子の構造とよく合っています。
粉原料でつくる均一な生地では、こうした段階的な食感は生まれにくくなります。道明寺の粒感は、見た目にも表情を与え、食べる前から「桜餅らしさ」を伝える役割を果たします。桜餅において道明寺が選ばれてきたのは、菓子の構造と原料の性質が噛み合っていたからです。
原料として見たときの扱いやすさ
製造現場の視点で見ると、道明寺は扱いやすい原料でもあります。粉類と比べて飛散しにくく、仕込み時のロスが出にくい点は、日常的な製造において見逃せません。蒸し戻し工程も比較的安定しており、経験値に大きく左右されにくいため、複数人で製造を行う現場や、継続的な品質管理を求められる環境にも適しています。
また、道明寺は冷めた後の食感変化が比較的穏やかです。出来立てだけでなく、販売までの時間や陳列後の状態まで含めて品質を考えたとき、扱いやすい原料といえます。行事菓子や季節商品など、一定時間の経過を前提とした商品設計にも向いています。
このため、日常の定番商品から季節菓子まで、同じ製造条件の中で原料を変えるだけで仕上がりを調整できる点も、道明寺が現場で使われ続けている理由の一つです。工程を大きく変えずに食感や見た目をコントロールできる原料は多くなく、製造の安定性と商品展開の両立が求められる場面で実用的な選択肢となります。
美濃与で取り扱っている道明寺製品
・細道明寺〈5ツ割〉20kg
・中荒道明寺〈3ツ割〉20kg
・頭道明寺〈8ツ割〉20kg
・丸粒道明寺 20kg
・焼道明寺 7kg
・晶雪粉 20kg
いずれも穀粉加工類として、仕上がりの食感や見た目、製造条件に応じて使い分けが可能です。
桜餅にとどまらない道明寺の価値
道明寺は桜餅専用の原料ではありません。粒感を活かした餅菓子や蒸し菓子、食感に変化を持たせたい和菓子など、用途は広がっています。粒の割り方や戻し方を調整することで、口当たりをやわらかくすることも、粒感を強調することも可能です。同じ原料を使いながら、商品ごとに表情を変えられる点は、商品展開を行う現場にとって大きな利点です。
道明寺は万能な原料ではありません。なめらかさを最優先する菓子や、完全な均一性が求められる製品には向きません。それでも今なお使われ続けているのは、粒感、粘り、見た目、作業性、時間経過への耐性といった要素を、実用レベルで兼ね備えているからです。桜餅に使われ続けてきた理由は、文化ではなく、原料としての合理性にあります。







