和菓子づくりにおいて、原料選定は味や食感を決めるだけの作業ではありません。
どの原料を使うかによって、その菓子が「特別な一日を彩るもの」になるのか、「日常の中で繰り返し食べられるもの」になるのかが決まります。行事菓子と日常菓子では、求められる役割も製造の考え方も異なります。その違いを理解したうえで原料を選ぶことが、安定した商品づくりにつながります。

行事菓子と日常菓子は、前提条件が違う
行事菓子は、正月や節句、彼岸、祭事など、特定の時期と意味を持って提供される菓子です。一方、日常菓子は、日々の中で繰り返し食べられることを前提とした商品です。この違いは、単なる販売タイミングの差ではありません。
行事菓子は「特別であること」が価値になりますが、日常菓子は「続けられること」が価値になります。そのため、原料に求められる条件も自然と変わってきます。
行事菓子に向く原料の考え方
行事菓子は、「特別な日」に食べられることを前提とした菓子です。そのため、原料には分かりやすい存在感と意味を持つ表情が求められます。
まず重要になるのが、見た目や食感で「行事らしさ」を伝えられる原料です。たとえば、桜餅や節句菓子では、粒感がはっきりと出る 丸粒道明寺 20kg や 頭道明寺〈8ツ割〉20kg が使われることがあります。粒そのものが見え、噛んだときの食感にも変化が生まれるため、菓子に特別感を持たせやすい原料です。
また、行事菓子では「原料の背景」が語れることも重視されます。上用菓子に使われる 分銅印 薯蕷粉 22kg や、彼岸・祭事菓子で用いられる 本葛粉末 20kg などは、原料名そのものが品質や伝統を想起させます。多少扱いに手間がかかっても、完成したときの格や説得力が優先されるのが行事菓子の特徴です。
香りを前面に出したい場合には、 京きな粉 5kg×4 や 黒寿きな粉〔登録商標〕5kg×4 のように、風味がはっきりした原料が選ばれます。きなこをまぶした瞬間に立ち上がる香りそのものが、行事菓子の印象を形づくります。
さらに、柏餅などの節句菓子では、乾燥柏葉 や 特選柏青葉 といった「素材そのものが意味を持つ原料」が不可欠になります。行事菓子では、原料がそのまま季節や意味を背負うことが多く、代替が効きにくい点も特徴です。
日常菓子に向く原料の考え方
一方、日常菓子は「繰り返し食べられること」が前提になります。そのため、原料には安定性と扱いやすさが強く求められます。
たとえば、桜餅や餅菓子を定番商品として日常的に製造する場合、粒感が強すぎない 中荒道明寺〈3ツ割〉20kg や 細道明寺〈5ツ割〉20kg が使いやすくなります。道明寺らしさは残しつつ、仕込みや成形のばらつきを抑えやすい点が、日常菓子向きの特性です。
粉類では、仕上がりが安定しやすい 白蕎麦粉 22kg や 玄米粉 25kg などが、日常菓子のベース原料として選ばれます。風味が過度に主張せず、他素材とのなじみが良いため、毎日の製造でも品質を揃えやすくなります。
また、日常菓子ではコストや歩留まりも重要な判断軸になります。丹波大納言小豆 30kg や 丹波大納言小豆 かのこ豆 などは、見た目の華やかさよりも、粒揃いや炊き上がりの安定性が重視される場面で使われます。
きなこについても、行事用には香りを立たせ、日常用にはなじみを重視するなど、使い分けが行われます。京きな粉 小袋詰 のように規格を変えることで、売り場や用途に合わせた展開もしやすくなります。
同じ原料でも使い方で役割は変わる
行事菓子と日常菓子は、原料を完全に分ける必要があるわけではありません。同じ原料でも、粒度や焙煎度、加工方法を変えることで役割を変えることができます。たとえば、粒感を強調した道明寺は行事菓子向きですが、粒を細かくしたものは日常菓子でも使いやすくなります。
重要なのは、「原料そのもの」ではなく、「どう使うか」を含めて考えることです。原料の特性を理解したうえで使い分けることで、商品設計の幅は広がります。
行事菓子に向く原料、日常菓子に向く原料を考えることは、単なる素材選びではありません。どのような場面で、誰に、どんな価値を届けたいのかを整理する作業です。原料を見直すことで、商品の立ち位置や製造の考え方が明確になります。原料選定を感覚ではなく、目的から考えること。それが、行事菓子と日常菓子をつくり分けるための、最も現実的な方法です。







